ロジックツリーは、書き方を読んでも自分の課題に当てはめた瞬間に手が止まりがちです。止まったら、分解の切り口が1つの軸にそろっているかと、枝を比べるための数字や事実が置けているかの2点を確かめます。この記事では、残業の削減・売上の減少・問い合わせ対応の業務改善、コンサルティングファームの選考で出るケース問題、看護の転倒・転落という5つの設例を、完成したツリーと途中の計算まで見せて解答します。自分で解いて確かめる練習問題と、ロジックツリーが苦手とする問題もあわせて整理しました。
まとめ
ロジックツリーは、課題や原因候補、打ち手を階層的に分けて整理する図です。MECE(漏れなく重複なく)を意識して分解し、目的に応じて調べる枝や手を打つ順番を決めます。要点は次の4点です。
- この記事では型を4種類に整理します。原因を探すならWhyツリー、打ち手を出すならHowツリー、構造を把握するならWhatツリー、数値目標を管理するならKPIツリーです。
- 枝を分けたら数字を置きます。「残業350時間のうち手戻りが120時間(34%)」のように配分が見えて初めて、どの枝から調べるかが決まります。
- 件数で比べる分解は、1件が1つの枝にだけ入る切り口(作業区分・発生場面・計算式)で分けます。要因別に分けると1件が複数の枝に入り、合計が元の件数を超えます(例題5)。
- 互いに影響し合うループ構造(残業増加が離職を招き、要員減がさらに残業を増やす等)の全体像は、ツリーでは表現できません。
ロジックツリーの基本構造とピラミッドストラクチャーとの違い
ロジックツリーの定義と分解の単位
ロジックツリーは、1つのテーマを頂点に置き、それを構成する要素へ枝分かれさせて階層的に並べた図です。数式で分解する場合は、下位の指標を計算すると上位の値に戻る関係を保ちます。売上を「訪問数×転換率×客単価」に分けたなら、3つを掛け合わせると元の売上に戻ります。原因や手段を整理する場合は数式ではなく、下位の枝が上位の原因や目的に本当に結びついているかを確かめます。
分解の原則として使われるMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)は、マッキンゼーに在籍したバーバラ・ミントが略語にして分類に応用した言葉です。ミントはこの手法を著書『The Pyramid Principle』にまとめました。日本では「ミーシー」と読まれますが、マッキンゼーのアラムナイ向け記事「MECE: I invented it, so I get to say how to pronounce it」でミント本人は、1音節の「ミース」(英語のnieceと同じ韻)が正しいと述べています。同じ記事では「実際に考えたのはアリストテレスだ」とも補足しました。用語の詳しい意味はMECEの意味と読み方、フレームワークでの使い方を参照してください。
ロジックツリーとピラミッドストラクチャーの用途の違い
ピラミッドストラクチャーは、結論を頂点に置き、その下に結論を支える根拠を並べる図です。この記事では、課題を分けて調べる場面にロジックツリー、結論と根拠を整理して伝える場面にピラミッドストラクチャーを使います。ただし、ピラミッドストラクチャーは自分の考えを整理する段階で使うこともあり、用途は伝達だけに限りません。根拠の並べ方そのものは演繹法と帰納法の違いが参考になります。
実務では、ロジックツリーで原因を特定し、得た結論を頂点に置き換えてピラミッドストラクチャーに組み直すと、報告資料の骨組みになります。報告では分析の枝を順に並べるのではなく、枝から導いた結論を先に示し、枝はその根拠として下に置きます。
4種類のロジックツリーと使い分けの基準
この記事では、頂点に何を置くかに合わせて、ロジックツリーをWhy・How・What・KPIの4種類に整理します。同じ課題でも、答えを出したい問いが変われば使う型が変わります。
| 種類 | 頂点に置くもの | 答える問い | 分解の軸 | この記事の例題 |
|---|---|---|---|---|
| Whyツリー | 起きている問題 | なぜ起きたか | 原因 | 例題1・例題5 |
| Howツリー | 達成したい状態 | どうやって実現するか | 手段 | 例題3 |
| Whatツリー | 対象の全体 | 何で構成されているか | 構成要素 | 例題2 |
| KPIツリー | 最終目標の数値 | 何を動かせば数値が動くか | 計算式 | 例題4 |
原因が分からないならWhyツリー、原因は分かっていて打ち手が決まらないならHowツリー、対象の全体像が見えていないならWhatツリーから始めます。この記事では、Whatツリーのうち指標を四則演算で結ぶ型をKPIツリーとして扱います。この型では、各枝に実際の値を入れれば全体の値を検算できます。改善への貢献度を比べるときは、各指標をどれだけ動かせるかを仮定し、全体への影響を計算して比べます。目標値の置き方はKGI・KPIの違いとKPIツリーの使い分けで整理しています。
原因の見当がついていない段階でHowツリーを描くと、思いついた施策を並べただけの一覧になり、なぜその施策なのかを説明できません。
例題と解答|5つの設例で見るロジックツリーの解き方
以下の数値はいずれも解説用に設定した架空の前提であり、実在の企業や医療機関のデータではありません。各例題の最後に完成したツリーを示すので、どの項目をどの階層に置くかと、分解した後に何を計算するかを追ってください。
例題1|残業が月35時間から減らない原因の特定(Whyツリー)
設問:受託開発チーム10名、直近3か月の1人あたり月平均残業は35時間(チーム合計は月350時間)。「業務量が多いから」という説明のまま増員が通らない。残業を減らすにはどこに手を打つべきかをWhyツリーで示してください。
分解:このチームの作業記録では、残業の1時間ごとに作業区分を1つだけ付けているとします。まず残業の内訳を、作業区分で「予定作業」「手戻り(一度終えた作業のやり直し)」「会議」の3つに分けます。1時間に区分は1つしか付かないので重複せず、残業時間はいずれかに必ず入ります。この段階は構成の把握であり、各区分で残業が発生した理由を掘り下げる段階が原因分析です。
解答:3か月分の作業記録を月平均に均すと、第1階層の配分は次のとおりです。
| 第1階層の枝 | 時間 | 構成比 |
|---|---|---|
| 予定作業 | 160時間 | 46% |
| 手戻り | 120時間 | 34% |
| 会議 | 70時間 | 20% |
| 合計 | 350時間 | 100% |
最大の枝は予定作業の160時間ですが、中身は2種類あります。着手予定日からの遅れを記録で数えると、仕様確定待ちで着手が遅れて残業に押し出された分が90時間、見積もりを超えた分が70時間でした。さらにこの設例では、手戻り120時間の記録の理由欄がすべて「仕様変更」だったとします。仕様確定待ち90時間と仕様変更による手戻り120時間を合わせると210時間、全体の60%が仕様に関連しています。ただし、仕様変更が確定前の着手に起因するかは、この記録だけでは分かりません。
業務量の超過に最も近いのは見積もり超過の70時間(20%)ですが、これも業務量の増加、見積もりの過小評価、作業の難航を区別しないと増員の根拠になりません。残る280時間は、仕様を決める担当者やレビュー担当者の不足が背景にある可能性も含めて手戻り・待ち・会議の理由を調べ、増員と工程の見直しのどちらが効くかを判断します。少なくとも「業務量が多いから増員」という説明は、残業の8割について根拠を示せていません。
完成したツリー
- 残業が月350時間から減らないのはなぜか
- 予定作業 160時間
- 仕様確定待ちによる着手遅れ 90時間
- 見積もり超過 70時間
- 手戻り 120時間(理由欄はすべて仕様変更)
- 会議 70時間
- 予定作業 160時間
仕様に関連する210時間を調べ、受入条件の曖昧さやレビューの遅れが原因と確認できた場合は、Howツリーで対策を整理します。対策候補は、着手前に受入条件を文書化する、レビューを設計完了時点まで前倒しする、といった打ち手に分かれます。分解の起点となる「あるべき姿」の描き方はAs Is / To Be分析のやり方と進め方が参考になります。
例題2|売上が前年比18.9%減った要因の分解(Whatツリー)
設問:ECサイトの年間売上が前年の14,400,000円から11,685,000円へ、18.9%減少しました。「集客が落ちた」と報告されていますが、本当に集客が主因かを確かめてください。
分解:同じ集計期間について、訪問数をセッション数、転換率を注文数÷セッション数、客単価を売上÷注文数と定義します。この定義なら売上=訪問数×転換率×客単価が必ず成り立ちます。ただし3つの指標は互いに独立とは限らず、値上げが転換率を下げるといった連動は起こります。
解答:前年は訪問数100,000・転換率1.8%・客単価8,000円、今年は訪問数95,000・転換率1.5%・客単価8,200円とします。検算すると100,000×1.8%×8,000=14,400,000円、95,000×1.5%×8,200=11,685,000円で、設問の数値と一致します。
| 指標 | 前年 | 今年 | 前年比 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問数 | 100,000 | 95,000 | 0.950 | -5.0% |
| 転換率 | 1.8% | 1.5% | 0.833 | -16.7% |
| 客単価 | 8,000円 | 8,200円 | 1.025 | +2.5% |
| 売上 | 14,400,000円 | 11,685,000円 | 0.811 | -18.9% |
前年比を掛け合わせると0.950×0.833×1.025≒0.811です。掛け算で分解したツリーでは、各枝の前年比の積が全体の前年比になり、そこから1を引くと増減率(-18.9%)になります。増減率そのものを掛けても全体の増減率にはならない点に注意してください。
訪問数も5.0%減っているので、売上減少の一因であることは確かです。ただし影響は転換率の低下(-16.7%)のほうがはるかに大きく、広告で訪問数を増やす前に、転換率が下がった背景を調べるのが先です。図を描いた段階では「集客」も「転換率」も同じ大きさの枝ですが、数字を入れた瞬間に優先して調べる枝が決まります。
客単価が上がった理由には、値上げ、高単価商品への構成比シフト、1注文あたりの購入点数の増加、値引きの縮小などが考えられます。値上げであれば、価格による離脱が転換率の低下を説明する候補になるため、次は価格帯別の転換率に分けて、どの価格帯で落ちたのかを確かめます。
完成したツリー
- 売上 11,685,000円(前年比0.811)
- 訪問数 95,000(前年比0.950)
- 転換率 1.5%(前年比0.833)
- 次に分ける枝:価格帯別の転換率
- 客単価 8,200円(前年比1.025)
例題3|問い合わせ対応240時間を削る業務改善(Howツリー)
設問:情報システム部門への社内問い合わせが月1,200件、1件あたり平均12分で、対応工数は月240時間(1,200件×12分=14,400分)。人員は増やせません。業務改善の打ち手をどこから入れるかを示してください。
分解:総対応時間=件数×1件あたり時間です。打ち手は、件数そのものを減らす枝と、1件あたりの時間を短くする枝の2本に分かれます。
解答:件数を内容別に配分すると次のとおりです。この設例では、どの内容も1件あたり一律12分と仮定して対応時間を出しています。実務では内容別の平均時間を測ってから工数を計算します。
| 内容 | 件数 | 構成比 | 対応時間 | 振り分け |
|---|---|---|---|---|
| パスワード・アカウント再設定 | 420件 | 35% | 84時間 | 件数を減らす |
| 操作方法の質問 | 360件 | 30% | 72時間 | 時間を短くする |
| 仕様確認 | 240件 | 20% | 48時間 | 件数を減らす |
| 障害連絡 | 180件 | 15% | 36時間 | 時間を短くする |
この設例では「パスワード・アカウント再設定」の420件を、セルフサービス化を検討できるパスワード再設定として扱います。現状の対応工数は420件×12分=5,040分、すなわち月84時間です。判断を伴わず手順が固定されているため、利用者自身が再設定できる仕組みに置き換えられます。全件が置き換わった場合の削減余地は年間1,008時間(84時間×12か月)で、これが上限です。セルフサービスでも本人確認は必要で、たとえばMicrosoft Entraのセルフサービスパスワードリセット(SSPR)のしくみでは、利用者が事前に認証方法を登録しておく必要があります。登録した認証方法を使えない利用者は有人対応に残るので、置換率を8割と仮定すると、削減の見込みは年間約806時間(1,008時間×0.8)です。
2番目に多い操作方法(360件・月72時間)は、この設例では利用者ごとに状況が違い、回答を一律に自動化できないと仮定します。この枝はマニュアルやFAQの検索性を上げて1件あたり時間を短くする側に振り分け、よく出る定型的な質問が含まれていれば、その部分は利用者が自分で解決できる形に移します。社内向けのFAQサイトを作る場合の進め方はQAサイト・FAQサイトシステム開発で紹介しています。窓口の設計全体はITヘルプデスクの受付窓口・チケット管理・ナレッジ化の設計、複数の打ち手の順番付けは工数削減の優先順位の決め方が参考になります。
末端の業務をシステムで自動化するか人手のまま改善するかは、件数の多さだけでは決まりません。パスワード再設定を候補にできたのは、手順が固定されていて例外が少ないからです。例外が多い業務では、例外を生んでいる業務ルールの見直しと定型部分だけの自動化を比べ、例外対応を含めた総工数と費用で判断します。業務の設計から変える進め方はBPOとBPRの定義と相違点で整理しています。
完成したツリー
- 問い合わせ対応の月240時間を減らすには
- 件数を減らす
- パスワード再設定をセルフサービス化する(月84時間)
- 仕様を文書で公開する(月48時間)
- 1件あたり時間を短くする
- 操作方法のマニュアル・FAQの検索性を上げる(月72時間)
- 障害連絡の受付項目を定型化する(月36時間)
- 件数を減らす
例題4|カフェの月商を1.5倍にするケース問題(KPIツリー)
設問:駅前のカフェ(40席・朝8時〜夜8時営業・月30日営業)の月商を1.5倍にする施策を提案してください。コンサルティングファームの選考で出るケース問題の形式です。数値は自分で仮置きして構いません。
分解:月商=1日の売上×営業日数、1日の売上=店内の売上+持ち帰りの売上です。店内の売上は時間帯別の客数×客単価に分けます。時間帯は重ならず、足すと1日の全営業時間になります。持ち帰りは現状0円の枝として最初から置いておきます。
解答:客単価900円、時間帯別の1日客数を次のように仮置きします。現状の月商は120人×900円×30日=3,240,000円、目標は1.5倍の4,860,000円で、差は月1,620,000円(1日54,000円)です。
| 時間帯 | 1日の客数 | 席の状態 | 伸ばせるか |
|---|---|---|---|
| 朝 8〜11時 | 30人 | 半分ほど空き | 余地あり |
| 昼 11〜14時 | 60人 | 満席・待ちあり | 回転率次第 |
| 午後 14〜17時 | 20人 | 大半が空き | 余地あり |
| 夜 17〜20時 | 10人 | 大半が空き | 余地あり |
| 合計 | 120人 | - | - |
客単価だけで目標を達成するには、客数を維持したまま平均900円を1,350円にする必要があります。平均客単価は追加注文や商品構成でも上げられますが、この設例ではその実現性を裏付ける情報がないため、客数を伸ばす案を検討します。昼の客数は、席数だけでなく滞在時間や提供・会計・片付けの速さで決まる回転率にも左右されます。この設例では昼の回転率はすでに上限に近いと仮定し、空席のある時間帯と、席を使わない売り方を検討します。
この店の周辺には14〜17時に待ち合わせや作業で使う需要があると仮定し、午後に軽食とデザートのセットを出して客数を20人から50人へ(30人×900円=1日27,000円)、昼の待ち客向けに持ち帰りを新設して1日40食×700円(1日28,000円)を足します。ただし、店内売上を減らさず40食を追加販売でき、調理・会計にもその余力があると仮定します。合計1日55,000円、月1,650,000円の上乗せで、月商は4,890,000円、現状比1.51倍となり目標に届きます。
ケース問題では、仮定の妥当性と計算の正確さを確かめたうえで、「どの枝に伸びしろがあり、どの枝が何の制約で止まっているか」を説明します。昼の客数を伸ばす提案をするなら、回転率や提供能力をどう上げるかまで説明する必要があります。選考の流れそのものはMBB(マッキンゼー・BCG・ベイン)の違いと選考の流れで整理しています。
完成したツリー
- 月商:現状3,240,000円 → 施策後の試算4,890,000円(目標4,860,000円)
- 1日の売上(現状108,000円)
- 店内の1日売上=各時間帯の売上の合計(各時間帯の客数×客単価900円)
- 朝30人/昼60人(回転率次第)/午後20人→50人/夜10人
- 持ち帰りの売上 0円 → 1日40食×700円
- 店内の1日売上=各時間帯の売上の合計(各時間帯の客数×客単価900円)
- 営業日数 30日
- 1日の売上(現状108,000円)
例題5|病棟の転倒・転落が半年で24件(看護のWhyツリー)
設問:ある内科病棟で、直近半年の転倒・転落のインシデント報告が24件ありました。再発防止策を立てるために、どこから調べるべきかをWhyツリーで示してください。
分解:この設例では、原因候補を「患者側の要因」「環境の要因」「ケア・手順の要因」に分けて考えます。ところがこの3つで件数を数えると、合計が24件を超えます。夜間にトイレへ向かう途中で転んだ1件には、睡眠薬の影響(患者)、暗い通路(環境)、ナースコールを押さずに歩いた(手順)が同時に当てはまるからです。要因別の分解は原因を書き出すには使えても、件数を比べて優先順位を決める用途ではMECEになりません。件数で比べるなら、1件が1つの枝にだけ入るように「発生した場面」で分け、判定の順番も決めておきます。この配分は発生状況の整理であり、原因の解答ではありません。選んだ場面の原因候補を掘り下げる段階でWhyツリーを使います。
解答:報告書の24件を、①トイレへの往復中、②①以外でベッドから起き上がる・立ち上がるとき、③①②以外の廊下・病室内の歩行中、④それ以外(入浴・検査での移動など)、の順に判定し、最初に当てはまった場面へ1件ずつ配分すると次のとおりです。
| 発生場面(判定順) | 件数 | うち夜間(22〜6時) |
|---|---|---|
| ①トイレへの往復中 | 12件 | 9件 |
| ②起き上がり・立ち上がり | 6件 | 4件 |
| ③廊下・病室内の歩行 | 4件 | 1件 |
| ④その他 | 2件 | 0件 |
| 合計 | 24件 | 14件 |
トイレへの往復中が12件で半数を占め、そのうち9件が夜間です。件数からは「夜間の排泄行動」を最初に調べる枝に選べます。ただし対策の順番は件数だけで決めず、骨折などの傷害の程度や再発の可能性も報告書で確かめて決めます。調べる枝が決まったら、ここで初めて要因別の分解を使い、9件それぞれに患者・環境・手順の要因を書き出します。対策候補には、排泄の時間帯に合わせた声かけ、移動経路の照明、離床センサーの対象患者の見直しがあります。実施する対策は、各患者の状態と確認できた要因に対応させて選びます。
完成したツリー
- 転倒・転落が半年で24件起きたのはなぜか
- ①トイレへの往復中 12件
- 夜間 9件 → 患者・環境・手順の要因を1件ずつ書き出す
- 日中 3件
- ②起き上がり・立ち上がり 6件
- ③廊下・病室内の歩行 4件
- ④その他 2件
- ①トイレへの往復中 12件
転倒・転落は、医療現場で報告件数の多い事故です。日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業の2024年年報の集計(参加登録医療機関からの報告)では、医療事故5,911件のうち「療養上の世話」が1,840件(31.1%)を占め、その内訳では転倒が1,048件、転落が110件でした。この集計表も件数を事故の程度別に分けて示しており、件数と重さの両方を見る必要があることが分かります。人の行動に起因する誤りの分類はヒューマンエラーの種類と仕組みで防ぐ対策で解説しています。
ロジックツリーの作り方の手順と切り口の選び方
ロジックツリー作成前の問い・目的の設定と分解手順
作図の前に、頂点に置く問いと分解の目的を確定します。頂点が「売上」のような名詞のままだと、原因を探しているのか構成を知りたいのかが定まらず、途中で枝の性質が混ざります。「なぜ売上が前年比で減ったのか」と問いを定めたら、例題2のようにWhatツリーで減少した指標を絞り、その指標が下がった理由をWhyツリーで調べます。
- 頂点に問いを書く(原因を探すのか手段を出すのかを問いの形で確定する)
- 目的に合う切り口で第1階層を分ける(枝の本数を先に決めず、漏れと重複を確認する)
- 各枝に数値または事実を割り当てる
- 配分の大きさに加え、影響の深刻さや改善余地を比べ、優先する枝をさらに分解する
- 末端がツリーの種類ごとの終了条件を満たしているか確認する
手順4では、優先順位に応じて分解の深さを変えます。配分の小さい枝でも、重大な影響や大きな改善余地があれば詳しく調べます。定量比較に必要な数字が不足している場合は、計測方法を設計します。自己分析など数値化を目的としないツリーでは、具体的な出来事や記録を根拠に分解を続けます。
MECEに分けるための4つの切り口
- 計算式で分ける:売上=訪問数×転換率×客単価のように掛け算・足し算で分ける。下位指標から上位の値を再計算できるため、数値の整合性を点検できます(例題2・例題4)。
- プロセスや場面で分ける:受注・設計・開発・テストのような工程、あるいは転倒の発生場面のように、時間の流れで分ける(例題5)。
- 対立軸で分ける:新規と既存、社内と社外、固定費と変動費のように2分する。
- AとA以外で分ける:「Aである」と「Aでない」に分ける形は、定義上、漏れも重複も生じません。
4番目は最後の逃げ道として覚えておく価値があります。分類名を並べると漏れが不安になりますが、「Aと非A」なら証明の必要がありません。まずこの形で分け、非Aの側を具体化していけばMECEを保ったまま分解を進められます。
ロジックツリーの種類別の分解終了条件
階層数に決まった正解はなく、終了の基準はツリーの種類で変わります。Howツリーは「担当者が着手できる行動になったか」、Whyツリーは「原因の仮説を事実で検証できるところまで来たか」、Whatツリーは「分析の目的に必要な構成要素がそろったか」で止めます。Howツリーなら、「コミュニケーションを改善する」で止まっていれば足りず、「仕様確定前の着手を禁止し、受入条件の文書化を着手条件にする」まで下りていれば十分です。
練習問題と解答|よくある誤答を添削する3問
例題を読んだら、次の3問を自分で解いてから解答を見てください。いずれも、研修や選考でロジックツリーを描いたときに指摘されやすい形を題材にしています。
問1|顧客を「20代・30代・会社員・学生」に分けたツリー
問題:「顧客」を第1階層で「20代」「30代」「会社員」「学生」に分けました。MECEになっていますか。
解答:なっていません。年齢と職業という2つの軸が同じ階層に混ざっているため、「30代の会社員」は2つの枝に重複し、「40代の自営業者」はどの枝にも入りません。直し方は、第1階層を年齢の1軸(20代以下・30代・40代・50代以上)にそろえ、職業は第2階層で分けることです。1つの階層には1つの軸しか置かない、と覚えておけば同じ誤りは防げます。
問2|「売上=新規顧客数+リピーター数+客単価」というツリー
問題:売上を「新規顧客数」「リピーター数」「客単価」の3つの枝に分けました。どこが誤りですか。
解答:人数と金額を足しているため、枝を合わせても売上に戻りません。期間内の顧客を新規とリピーターに重複なく分け、客単価を同じ期間の顧客1人あたり売上と定義すると、「売上=(新規顧客数+リピーター数)×客単価」になります。第1階層を「顧客数」と「客単価」の掛け算にし、顧客数の下を新規とリピーターの足し算で分ける形です。新規200人・リピーター800人・客単価5,000円なら、(200+800)×5,000=5,000,000円と検算できます。枝の値を上に向かって計算し、頂点の値に戻るかを確かめるのが最も確実な点検方法です。
問3|末端が「社員の意識を高める」で止まったツリー
問題:「納期遅れを減らす」のHowツリーの末端に「社員の意識を高める」と書きました。何が足りませんか。
解答:誰が・いつ・何をするかが決まっておらず、実行したかどうかを確かめられません。例えば「週次の進捗会議で、期限を過ぎたタスクを担当者別に一覧表示する」まで下ろせば、翌週から着手でき、件数で効果も測れます。「意識」「徹底」「強化」で終わる末端は、もう1階層下げる合図です。
ロジックツリーの弱点と苦手な問題
Whyツリーとなぜなぜ分析の役割の違い
Whyツリーは原因の候補を同じ階層に並べて枝分かれさせ、どの枝の影響が大きいかを比べる手法です。なぜなぜ分析は「なぜ」を繰り返して原因を掘り下げる手法です。大野耐一は『トヨタ生産方式』(ダイヤモンド社、1978年、34ページ)で、5回の「なぜ」を自問して因果関係の裏にある本当の原因を突き止める考え方を示しました。トヨタ自身も『サステイナブル マネジメント レポート2016』で、「なぜ?」を5回以上繰り返して真因を究明し、対策を立案・共有する取り組みを従業員が実践していると説明しています。なぜなぜ分析でも原因が1つとは限らず、米国の医療改善研究所IHIの5 Whysの解説は根本原因が複数ありうると注意しています。
実務では両者を併用します。Whyツリーで候補を出して配分の大きい枝を選び、その枝をなぜなぜ分析で掘り下げる順番です。Whyツリーを1本道で描くと、最初に思いついた原因だけを深掘りし、他の可能性を検討しないまま結論に至ります。手順はなぜなぜ分析で真因に迫る手順と現場での進め方、製造・品質分野の特性要因図との関係は品質管理とQC7つ道具の全体像で解説しています。
循環する因果を表現できないという構造上の限界
ロジックツリーは上から下へ一方向に分かれ、枝が再び合流しない図です。そのため互いに影響し合う関係を表現できません。「残業が多い→離職が増える→要員が減る→1人あたりの負荷が増える→残業が多い」のように因果がループしている問題は、どこを頂点に置いてもツリーに収まらず、分解した時点で循環そのものが抜け落ちます。
ループかどうかは、変数どうしの因果を矢印でたどり、出発した変数へ戻る閉じた経路があるかで確かめます。悪化を増幅する循環だけでなく、変化を打ち消して元に戻そうとする循環もあります。循環の全体像は因果ループ図で示し、個々の構成要素や対策候補の整理にはロジックツリーを併用します。
よくある質問
ロジックツリーの弱点は何ですか?
因果がループする問題(残業と離職のように互いを悪化させ合う関係)の全体像を表現できない点です。また、切り口は作成者が選ぶため、切り口が偏っていると、その先をいくら精密に分解しても偏りは直りません。
ロジックツリーの身近な例は?
家計の見直しが分かりやすい例です。「支出が多い」を頂点に固定費と変動費で分け、固定費を住居80,000円・通信14,000円・保険12,000円・サブスクリプション6,000円、変動費を食費45,000円・交際費20,000円・日用品8,000円と書き入れます。金額では食費が住居に次ぐ枝ですが、固定費の削減は翌月以降にも効果が続くため見直し候補になります。通信の14,000円を優先するには、必要なサービスを保ったまま削減できる金額と変更費用を確かめます。
ロジックツリーとMECEの違いは何ですか?
ロジックツリーは図の形式、MECEは分け方の条件です。MECEは「漏れなく重複なく」を意味し、ツリーの各階層が満たすべき品質基準にあたります。MECEを満たさないツリーでも描けてしまいますが、漏れた枝に真因があれば結論を誤り、重複した枝があれば同じ原因を二重に数えます。
ロジックツリーは何階層まで分解すればよいですか?
階層数ではなく末端の状態で判断します。Howツリーなら担当者が着手できる行動、Whyツリーなら事実で検証できる原因の仮説、Whatツリーなら目的に必要な構成要素まで分けられた段階が目安です。すべての枝を同じ深さまで分解する必要はなく、配分の大きさ、影響の深刻さ、改善余地から優先する枝を深く下ろします。
自己分析にもロジックツリーは使えますか?
使えます。「志望動機」を頂点に、業界・職種・企業のどこに動機があるのかを分けるWhatツリーが向きます。数値を置けない対象なので、分けた後は各枝に具体的な出来事(いつ・何をして・どう感じたか)を1つずつ割り当て、出来事が入らない枝は動機として弱いと判断します。