Python

Kerasとは?特徴・TensorFlowとの関係とKeras 3の最新事情を解説

Keras(読み方:ケラス)は、ニューラルネットワークをPythonで簡潔に記述するための高レベルディープラーニングAPIです。層を積み重ねるだけでモデルを組める書き味が特徴で、深層学習の入門から実務のプロトタイピングまで広く使われています。2023年に登場した「Keras 3」で、TensorFlow・JAX・PyTorchを同じコードから切り替えられるマルチバックエンド構成へ刷新されました。この記事では、Kerasの定義とTensorFlowとの関係、「開発終了では」という誤解、他フレームワークとの違い、最小実装までを一次情報に沿って整理します。

まとめ:Kerasの要点

  • 正体:ニューラルネットワークを記述する高レベルAPI。数値計算そのものはバックエンド(TensorFlowなど)が担う。
  • 読み方:ケラス。ギリシャ語で「角(つの)」を意味する。
  • TensorFlowとの関係:Keras 2時代はtf.kerasとしてTensorFlowに統合。Keras 3で再び独立し、複数バックエンドに対応した。
  • 「開発終了」は誤解:独立系Kerasが一度tf.kerasへ吸収された経緯が誤解の元。実際はKeras 3として活発に更新中(本稿時点で3.14系)。
  • 選びどころ:素早くモデルを試したい・学習コストを抑えたい場面に向く。細粒度の研究実装はPyTorch単体が有利。

以下で、それぞれの根拠と使い方を具体的に見ていきます。

Kerasの定義とできること

Kerasは「Deep Learning for humans(人間のためのディープラーニング)」を掲げる高レベルAPIで、行列演算やGPU実行といった重い処理はバックエンドに委ね、開発者はDenseConv2Dといった層を宣言的に組み立てることに集中できます。同じ深層学習でも、テンソル演算を細かく自分で書くPyTorchや生のTensorFlowに対し、Kerasは「モデルの構造をレシピのように書く」層に位置づけられます。

できることは、画像分類・回帰・系列データ処理・転移学習など一般的な教師あり学習の大半をカバーします。作者はフランソワ・ショレ氏で、開発は当初Googleで行われ、2015年に公開されました。

KerasとTensorFlowの関係とバックエンドの仕組み

Kerasを理解するうえで避けて通れないのが、バックエンドという考え方です。Kerasは設計図を担当し、実際の計算は差し替え可能なエンジンが実行します。

tf.keras(Keras 2時代のTensorFlow統合)

初期のKerasはTensorFlow・Theano・CNTKなど複数エンジンに対応していましたが、2019年前後にTensorFlow 2へ深く統合され、tf.kerasがTensorFlowの標準的な高レベルAPIになりました。この時期のKerasは実質的にTensorFlow専用で、単体パッケージの更新が目立たなくなったことが、後述する「開発終了」という印象につながります。TensorFlow側の詳細はTensorFlowとは?できること・使い方・GPU対応で解説しています。

Keras 3のマルチバックエンド(TensorFlow/JAX/PyTorch)

2023年にkeras-coreとして設計し直され、2023年末に3.0の安定版が公開、2024年にはTensorFlowの既定APIにもなったKeras 3では、TensorFlow・JAX・PyTorch・OpenVINO(推論のみ)を切り替えられる構成へ戻りました。バックエンドは環境変数KERAS_BACKENDや設定ファイル~/.keras/keras.jsonで指定します。同じモデル定義のまま、学習時はJAXで高速化し、既存のPyTorch資産に組み込む、といった使い分けができる点が現行Kerasの核心です。

「Kerasは開発終了」という誤解の正体

「keras 開発終了」で検索されるほど誤解が広がっていますが、Keras本体の開発は続いています。混同の原因は二つあります。

一つは前述のtf.keras統合です。独立パッケージとしてのKerasが一時停滞して見えたため、終わったと受け取られました。実際にはKeras 3として独立性を取り戻し、本稿時点の最新は3.14系(最新版は公式のリリースで確認してください)です。

もう一つは、初期バックエンドだったTheanoの終了との取り違えです。Theanoは2017年に開発終了しましたが、これはKerasのエンジン候補の一つが消えただけで、Keras自体の終息ではありません。結論として、これから学ぶなら旧情報ではなくKeras 3を前提にするのが正解です。「Kerasは古い」という理由で選択肢から外すのは、現状に照らすと誤った判断です。

他の深層学習フレームワークとの比較

Kerasを選ぶかどうかは、記述スタイルと目的で決まります。主要フレームワークを整理します。

フレームワーク 位置づけ 記述スタイル 現状
Keras 高レベルAPI 宣言的・簡潔 Keras 3で活発に更新
PyTorch 低〜中レベル 命令的(define-by-run) 研究・実装で主流
TensorFlow(生API) 低〜中レベル グラフ+命令的 本番運用・デプロイに強い
Caffe 旧世代 設定ファイル中心 開発が停滞

素早く標準的なモデルを組みたい、深層学習の学習コストを下げたい場面ではKerasが有利です。一方、独自の損失関数や勾配処理を細かく書き分ける研究用途では、PyTorchとは?特徴・できること・TensorFlowとの違いで挙げた命令的なPyTorchのほうが素直に書けます。設定ファイルでネットワークを定義するCaffeのように開発が止まったフレームワークを新規採用するのは避けるべきで、移行先としてもKerasやPyTorchが現実的な選択肢です。

Kerasのインストールと最小実装

Keras 3はバックエンドと組み合わせて導入します。ここでは最短の流れを示します。

インストールとバックエンド選択

Keras本体と、少なくとも一つのバックエンド(例:TensorFlow)を入れます。バックエンドはインストール後に環境変数で切り替えます。

pip install keras tensorflow

# バックエンドをJAXにする場合(未導入ならjaxも入れる)
export KERAS_BACKEND="jax"

対応するPythonのバージョンは変わることがあるため、導入前に公式のインストールガイドで確認してください。恒久的に既定バックエンドを固定したい場合は、設定ファイル~/.keras/keras.jsonbackend項目を書き換えます。

Sequentialモデルの構築・学習

もっとも基本的なSequentialモデルは、層をリストで積み重ね、compileで最適化手法と損失関数を決め、fitで学習させます。

import keras
from keras import layers

model = keras.Sequential([
    keras.Input(shape=(784,)),
    layers.Dense(64, activation="relu"),
    layers.Dropout(0.2),
    layers.Dense(10, activation="softmax"),
])
model.compile(optimizer="adam",
              loss="categorical_crossentropy",
              metrics=["accuracy"])
model.fit(x_train, y_train, epochs=5, batch_size=32)

この十数行が、Kerasが「人間のための」と名乗る理由です。同じ構造を生のTensorFlowやPyTorchで書くと、学習ループや勾配計算を明示する必要があり、記述量が増えます。

主要なレイヤーの使い分け

実務で使う頻度が高い層は限られます。まずこの4種を押さえれば、多くのモデルを組めます。

  • Dense:全結合層。分類・回帰の出力側や中間層の基本。
  • Dropout:学習時に一部ユニットを無効化し、過学習を抑える。
  • Conv2D:畳み込み層。画像の特徴抽出に使う。
  • LSTMGRU:系列データ向けの再帰層。時系列や文章を扱う。

活性化関数は中間層にrelu、多クラス分類の出力にsoftmax、二値分類にsigmoidが定番です。層と活性化を目的に合わせて選ぶことが、精度を左右する最初の分岐点になります。

よくある質問(FAQ)

Kerasの読み方は?

ケラスと読みます。ギリシャ語で「角(つの)」を意味する言葉に由来し、作者フランソワ・ショレ氏が名付けました。英語圏でも「ケラス」に近い発音で呼ばれます。

Kerasは無料ですか?ライセンスは?

無料のオープンソースソフトウェアで、ライセンスはApache License 2.0です。商用利用も可能で、ソースコードはGitHubのkeras-teamリポジトリで公開されています。導入コストはかからず、必要なのはPython環境とバックエンドのみです。

KerasとTensorFlowはどちらを使うべき?

両者は対立する選択肢ではありません。Kerasはモデルを記述する高レベルAPI、TensorFlowはその計算を実行するバックエンドの一つです。標準的なモデルを手早く組むならKerasの記法を使い、細かな入出力制御やデプロイ最適化が必要なときにTensorFlowの低レベルAPIへ降りる、という使い分けが実務的です。

Kerasの案件や求人はありますか?

機械学習エンジニアやデータサイエンティストの求人では、TensorFlow・PyTorchと並んでKeras(tf.keras含む)の経験が要件に挙がることがあります。ただし単独指定よりも「TensorFlow/Keras」のように併記されるケースが多く、バックエンド側の知識とセットで習得しておくと案件の幅が広がります。

これから学ぶならKeras 2とKeras 3のどちらですか?

新規に学ぶならKeras 3を前提にしてください。マルチバックエンド対応が標準になり、公式ドキュメントもKeras 3基準に更新されています。古いチュートリアルはKeras 2(tf.keras専用)の記法が混ざるため、import kerasで動く現行の書き方に読み替えると混乱が減ります。

関連記事

資料請求

RELATED POSTS 関連記事